祇園

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ところで―― 彼には、今どうしてもものにしたい妓(オンナ)がいた。 今宵も仲間と連れだって、馴染みである「松月」へとやってきた。 「こんばんは、お待たせしてしもて…」 ふすまの向こうで声がすると、晋作の顔がパッと輝いた。 「おぉ、蘭よ、待ってたぞ」 上機嫌で女を呼ぶ。 蘭と呼ばれた妓はなるほど、極上だった。 あどけなさの残る可愛い顔に、たぎる色気とやわらかな笑顔。 初めて会ったのが3日前。 ストライクゾーンもいいところで、晋作は一目で気に入ってしまった。
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