270人が本棚に入れています
本棚に追加
晋作は蘭を伴って別の座敷に移り、ふたりきりで酌み交わした。
夜風にたなびく雲を眺め、蘭に三味線を頼むと、即興の都々逸を唄う。
詩才もあり、喉もいい。
三味線は、道中欠かさず背に負っている。
「惚れたおまえにゃ命を捧ぐ 逝くも残るもぬししだい」
なんの飾りもない直球を投げかける。
蘭はふふッと笑い、
「危うい香りに まま酔いしれて 底なし沼で もがく日々」
白く細い指でつまびいた。
その様は、たまらなく艶っぽい…
京の暑さも手伝ってか、晋作は、ますますのぼせあがってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!