祇園

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「美しいのう…連れて帰って飾っておきたいほどじゃ。おまけに声もいい。…おまえ、決まった男がいるんか?」 聞いてみてから、野暮だった…と悔いた。 これほど美しくて魅力的な女だ、ほかの男も放ってはおくはずがないではないか。 「高杉はん、お上手ですなぁ。そやけど、うちにはそんな人、いやしまへん」 蘭は、長いまつ毛を伏せた。 「高杉はんこそ…お帰りを待ってはる方がいるのと違います?」 すかさずきり返すと、小首をかしげ、いたずらっぽく笑う。 「それは言いっこなしじゃったな」 苦笑いして、ごまかした。
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