祇園

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そして今夜もひとりで「松月」の暖簾をくぐり、蘭を呼ぶ。 友人の桂小五郎に「あまり熱くなるなよ」と釘をさされていたが、晋作の耳は華麗にスルー。 まさしく馬耳東風。 これほどピッタリくる言い回しもない。 だが、今宵も撃沈… 暖簾に腕押し、糠に釘。 必死に口説くが、蘭は、 「おおきに。そやけど、堪忍どす」 苦しそうに目を細めるばかり。 その切なげな表情にさえ、晋作はたまらなくそそられるのだ。
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