高杉晋作という男

2/9
前へ
/55ページ
次へ
「ねぇさま~!まってください」 ぬけるような青空の下、通りを駈けてゆく小さな影。 その視線の先には、誰もがふり返るちょっと変わったいでたちの娘が、柔らかくほほ笑んで立っている。 堀川に代々続く、老舗和菓子屋の養女、まりあだ。 奇妙な名と、日本人離れした顔立ち。 この時代には、まだまだ珍しい、クォーターである。 義弟の雅寿(マサトシ)は十違いの六歳だが、甘やかされて育ったせいか、泣き虫で、甘えん坊だ。 いつもまりあの後ろをくっついて歩く。 わからないことは、全部まりあに聞くものだから、日に何度も質問攻めに合う。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

270人が本棚に入れています
本棚に追加