高杉晋作という男

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「ぬしの姉上か?」 雅寿の背後で、優しく見守るまりあをみとめると、男は鋭い目を向けて聞いた。 「はい!わたしのねぇさまです」 にこにこと屈託なく答えると、まりあはぺこりと頭を下げる。 「異人か?」 …なんとぶしつけな人だろう。 京の人間は露骨な物言いを避けるから、あまりに直接的な言葉には、免疫がない。 目には見えないが、壁がある。 わずかな不快感を覚えながらも、表情には微塵も出さず、穏やかに言った。 「いえ、クォーターと言いまして、わたしの祖父がエゲレス人です」 「ほぅ…」 ますます難しい顔で、まりあを眺めた。 この反応には、もう慣れている。
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