高杉晋作という男

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「少年老い易く 学成り難し」 男が諳じる。 「一寸の光陰 軽んず可からず」 まりあが後に続くと、切れ長の目を嬉しそうに細めた。 「未だ覚めず 池塘春草の夢」 「階前の梧葉 已に秋声」 「別嬪なうえに、学もある。これからのおなごはこうでなきゃの」 口の右端をややあげて、ころころと笑うと、子どもみたいにあどけない。 ――と。 「異人だ~!異人だ~!」 「帰れ~!ニッポンは渡さないぞ~!」 橋の上から、子どもたちが石を投げつけ、彼女の頬をかすめた。
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