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「なにしちょる!」
友達の三味線を放り出し、男は顔を真っ赤にして怒鳴る。
「いいんです。もう慣れましたから」
「いいわけないじゃろ!美しかもんに傷つくのが、わしゃ何より嫌いじゃ」
綺麗な蒼い目を伏せて首を振るまりあの制止を振り切って、つかつかと歩み寄ると、子どもたちを鴨川に突き落とした。
呆気にとられるまりあをよそに、続いて自分も飛び込んだ。
ふんどし一本の裸身は華奢ではあるが、鍛えぬかれた輝きがあった。
いつの間にか、全員が笑顔。
「死ぬ時は死ぬっ。生きる時は生きるっ。今は学問をして、己を磨けばいいんじゃっ!」
誰にともなく声高にそう叫ぶと、そこらじゅうに響き渡るような高笑い。
まぶしい笑顔に、まりあも思わず顔をほころばせた。
この男こそ、幕末の世を疾風の如く駆け抜け、最期は血をはきながらも芸者と遊ぼうとした、粋人・高杉晋作だった。
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