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校舎を出て、グラウンドの端を通る時、花壇の周囲を囲む煉瓦の上に座って、友達と話し込んでいる颯太と目が合う。
「優、もう帰んの?あ、奈津子姉ちゃんこんちわー」
「うん……。委員会とか無いから」
視線をこちらに合わせる颯太に、声を心持ち低めにするよう心掛けて話した。
「そっちこそサッカー部は?さっき、夏川のバカが部活のメンバーと出てったけど」
「あぁ、朝のミーティングで、レギュラー以外はオフ日ってことになったんスよ」
腕を組みながら、グラウンドを挟んで反対側にあるプレハブのようなサッカー部の部室を見る奈津子に、颯太が自分なりの丁寧語で答える。海斗に対する馬鹿発言への反論がないのは、慣れてしまったからだろう。お友達は何やら戸惑っているようだが。
「えっと……僕らは先帰るね?話中断させちゃってごめん」
「んじゃな、颯太」
「うぃーっす」
これ以上は絡みづらそうだったので、多少強引に帰ることにした。
裸の枝が目立つようになってきたいちょう並木を通り過ぎ、この辺りでは太めの道路にある横断歩道を渡れば、もう住宅街だ。
豪奢でヨーロピアンな、薔薇が最高に似合う家もあれば、引き戸や地味な色合い、盆栽が絶妙にマッチしている日本風の一軒家だってある。
そんな住宅たちの間を縫いながら、二人で自分の家へと、適度な会話を織り交ぜながら歩いていた。
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