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「じゃあな!優、また明日!」
「うん!バイバイ」
私の家の前で、奈津子と別れる。尤も、彼女の家は私の隣だけど。奈津子が背を向けてから、門を開けていると、約5秒後に『ただいま!』という声が微かに聞こえてきた。
元気だなぁ……。などと思いながら、私も家の中へ入っていった。
「ただいまー」
「おかえり。テストの結果は返ってきた?」
母さんの言葉を聞いて、2階へ向かう階段の前で一瞬立ち止まり、すぐに直進してリビングへ向かう。
傍らに観葉植物が置かれた窓からは光が差し、部屋全体が明るい。白を基調としたインテリアが、引き立っている。
その部屋の中央よりは右寄り――優雅に紅茶が入ったカップを持ちながら、ソファーで寛いでいる母さんに、成績表を渡した。
左手で受け取り、右手に持っていたカップをソーサーに置いてから紙を開く一連の動作はそつがなく、我が母ながら気品に溢れていると思う。
「……流石は優ね。次もこの調子で頑張って。このままの成績キープ出来れば、志望校受かるんじゃない?」
大袈裟に褒めるわけではなく、微笑みながら言葉を与える母さんだからこそ、プレッシャーも感じなくて済むのだろう。
「この後に颯太の方も見なきゃいけないのね……」
少し短気なのはいただけないけど……。
大袈裟に溜息を吐いた母さんに、苦笑した。
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