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「ちょっと出かけてくるわ」
「どこ行くのよ?」
水音に混じっておふくろの声が聞こえてくる。
「優んとこ。忘れ物したの思い出したんだよ」
「ご迷惑にならないようにね。夕飯までには帰ってきなさい」
「りょうかーい。いってきます」
緩いようで常識はある(はずの)母親と適当なノリで会話して、出て行った。
学校を挟んで俺の家と反対側の住宅地に、優の家はある。何か色んなタイプの家が並んでる所で、見ていて飽きない。集合住宅だか何だか知らねーけど、俺のとこも、もっとイタリアンみたいな感じになんねーかな?実際そんなん見たことねぇけど。
そんなアホなことを考えながら走って向かうと、10分ぐらいで優の家の前に着いた。白を基調としてて、清潔感があって、俺の家には劣るけど広いし、車はお父さんの趣味なのか外車。泥臭さなんかが全く感じられない。休みの日には釣りばっかしてる、うちの親父に見せてやりてぇ。
毎回のことながらちょっと気後れするが、インターホンを鳴らす。
「はい。……どうぞ。優が待ってるわよ」
俺の返事も聞かずにインターホンを切って、優のお母さんが玄関を開けて迎え入れてくれた。
「おじゃましまーす」
「海斗!忘れ物って何?」
挨拶してから玄関で靴を脱いでいると、階段から優が駆け降りてきた。
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