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いつもより目尻が垂れた優が、俺を見つめてくる。そんな俺はと言えば、スカート穿いてる時が好きだけどスウェット姿もいいなーとか、普段は流してるだけの長め前髪をオレンジのコンコルドとかってやつで留めてるのに、不覚にもトキめいたりしてた。……気持ち悪ぃな、自分。
「あ……えっと……とりあえず部屋入って!探してみたけど、何を忘れたのかもわかんないし……」
トリップしてたところに、とぎれとぎれの優の言葉が聞こえて、慌てて現実に戻った。
「お……おう!てか、俺CD忘れたって言って……なかったな。ゴメン……」
「い、いいよ!CDかぁ……。じゃ、早く見つけよう?」
笑顔で、俺のアホさにも全く突っ込まないようにしてくれる、優の優しさが逆に痛い……。
「早く探してあげなさいよ?もう夕方だし……」
「わかってる!海斗……ついてきて?」
いつも思うけど、優って母親似なんだなぁ……。可愛くて気配り出来て、頭もいい……完璧な女の子だし。その遺伝子を持ってるお母様は、美人で薬剤師やってる、いわゆる才色兼美って言葉が似合う人。
でも……こんなにも女として完璧なのに……なんて酷いことするんだよって、神様に怒鳴ってやりたくなる程のもの抱えてんだよな……。
「海斗……?」
全く動いていない俺を、階段の中間辺りで、優が振り向いて頼りない声で呼ぶ。
「あ、わりぃ!今行く!」
慌てて、でも足音はたてないように階段を駆け登った。
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