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   携帯のアラーム音が鳴り響く。設定している曲はアップテンポなもので、眠りの世界からの覚醒は促されるものの、残念ながら寝起きの心地はいいものではない。  目を擦りながらアラームを止め、ベビーピンクの布団を退けて、ベッドから這い出る。  白いウサギが付いた、ファンシーなハンガーに掛かっている学ランに着替え、部屋から飛び出した。  階段を降り、洗面所で手を洗いとうがい、顔を洗ってから軽くブラッシングをする。鏡に映った自分を見て、安心する。  良かった……昨日と同じだ。  目も大きいままだし、鼻筋もはっきり通っていない。唇もツヤがあって、喉仏、ましてやヒゲも無い。  でも、これもきっと今のうちだけ……。  しばらくぼーっとしていたけれど、流石にこれ以上は遅刻すると思い、洗面所を出てからフローリングの廊下を小走りでリビングへと向かう。  リビングが近付くにつれ、焼けたパンの匂いが濃くなってきた。  お腹空いたなぁ……。  素直すぎる自分の身体に苦笑しながら、いつも通りにリビングへ入った。  日光が差し込む明るいリビング・ダイニングに入って、真っ先に目に飛び込んできたのは、食卓で新聞を読んでいる父さんの背中。左を向けば、コップを取り出している母さんが居た。
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