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「いってきまーす!」
「行ってらっしゃい。……優、あなたも早く食べたら?今日の寝癖酷いわよ」
「嘘っ!?」
颯太の言葉に素早く返した母さんの言葉を聞いた瞬間、間に合わないかもしれないという不安が頭を過ぎり、牛乳を一気に流し込んでから洗面所へ走った。
何とか準備を終えてから、鞄を持って玄関へ向かっている最中に、タイミング良くチャイムが鳴った。
「いってきます!」
挨拶もそこそこに、ドアを開ければ、門の向こうにセーラー服を着た女の子。
「優!……おはよ!」
「おはよう、奈津子」
黒髪のショートカット、健康的な小麦色の肌。意志の強そうな大きな目は猫に似ている。身長は私より少し低いぐらいのボーイッシュで可愛い、私の幼なじみは白い歯を見せて笑っている。
「早く学校行こうぜー!」
「そんな言葉遣いしちゃダメ!ああ……今日も寝癖直してない!颯太と同レベル……」
「あたしはこれでいいんだよ!」
奈津子が私の前を走る。追い掛けて走ると、冷たい風が頬を刺してくる。
毎朝、二人でこの調子。朝から騒々しいけど、慣れてしまえばこれが普通だ。
疲れた私が折れてからは、他愛もないことを話しながら、歩いて学校へ行った。
通学路の途中にある、いちょう並木の葉が散り始めている。黄色に彩られた歩道を歩いてゆき、そこを抜けてすぐにある中学の校門を通過し、グラウンドの端を通って薄汚れた白の校舎に入った。
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