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   「おはよーっす!」  海斗は教室に入ればすぐに、大声でクラス全員に挨拶をする。海斗と私達の間の時間に来たであろう人達は、皆「おはよう」と返した。  私と奈津子は対照的に、机の間を通りながら真っ直ぐ自分の席へ向かう。  「なっちゃん、柏木君、おはよう」  「おう、おはよー」  「お……おはよう」  サラリと返す奈津子と違い、私は吃ってしまう。  奈津子や海斗以外の人と話すことは、どうにも苦手で。必要以上に話して、私の心が露顕してしまったら……本当に居場所が無くなってしまう。私は世間から見れば、アブノーマルだから。それに、奈津子や海斗まで異常だと思われてしまったら、自分のこと以上に辛いかもしれない……。家族以外で私の存在を認めてくれた、大切な人が傷つくなんて、絶対に嫌だ。  だから、私は二人の前以外では、「柏木 優一」という普通の男子生徒でいい。自分に嘘を吐くことは苦しいけど、全てをさらけ出した先にある地獄よりは、幾分もマシだと言い聞かせている。  奈津子の後ろの席に座り、大袈裟に溜息を吐いた。  突然、机が陰る。  「おはよー、優ちゃーん」  左を向けば、美しい二重のアーモンドアイで冷ややかにこちらを見て、薄い唇で弧を描いている男が、ズボンのポケットに手を突っ込んで立っていた。
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