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 「菅野君……」  菅野 誠也……。一年の頃から同じクラスだったけど、多分私のことが嫌いなんだろう――『気持ち悪い』と、中学で初めて言ってきた男だ。それからずっとネチネチと嫌みを言われ続けてきている。正直に言ってしまえば、最も関わりなくない相手。  「今日もうっぜぇな。その態度と面、どうにかなんねーの?」  へらへらと笑いながら見下ろしてくる。薄ら笑いの顔も気持ち悪いし、話したくもないから目を逸らした。廊下側の窓から、疎らに早歩きで自分の教室へ向かっていく生徒が見える。  「おい!菅野……」  「誠也ー……。お前言い過ぎだっての」  見兼ねた奈津子が後ろを向いて怒鳴ろうとしたのと同時に、いつの間にこっちに来たかは分からないが、海斗が菅野の肩を掴んでいた。笑顔だったけど、私達に向けるようなそれとは明らかに違う。  「ベタベタ触んなよ、海斗。何でこんな陰キャラの女男、庇うんだか……。そんなに人気取りしてぇか?」  「朝っぱらからクラスの友達イジめる奴には言われたくねぇけど。だから俺よりモテないんだよ、誠也ちゃん?」  皮肉るような笑みを浮かべて、海斗に合わせて少し目線を上げる菅野と、眩しいぐらいの笑顔で菅野を見下ろす海斗は、傍から見ると恐ろしい……。さっきまで怒鳴ろうとしていた奈津子でさえ、視線をさ迷わせている。
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