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「だって、修兄ちゃん、目が合ってもすぐ逸らすし。ひっでーよな。なんか他人みたいで、俺傷ついちゃった」
「バカ。あの場面で何をどうすりゃいいっつーんだよ。こっちだって驚いたよ。まさか、お前がこの学校通ってたなんてな。それも、俺が受け持つクラスにいるって、どうよ。ありえねーって」
カラカラと笑って修兄ちゃんは言った。
二人で肩を並べて歩く帰り道。なんだか、昔に返ったみたいでくすぐったい。
「……気か?」
「え?」
しまった。昔を懐かしんでてて、修兄ちゃんの話を聞き逃してた。
振り向くと、修兄ちゃんは呆れたように小さく息を吐いて言い直した。
「駐車場までついて来る気かって」
「え? 駐車……って。あれ?」
言われて初めて気が付いた。いつもの帰り道から完全に逸れてしまっている。
つい、修兄ちゃんに合わせて歩いていたらしい。
「相変わらず、アホだな。デカくなっても変わってない」
クスクス笑って修兄ちゃんは言った。
俺はというと、からかわれた恥ずかしさと懐かしさで、悔しいんだか嬉しいんだか複雑な気持ち。顔が真っ赤になるのを感じながら、
「うるさいな」
と、小さく言い返すだけで精一杯だった。
「あ、そうだ。お前、まだ時間ある?」
「え? 別に暇だけど……なんで?」
俺の返事を聞いた修兄ちゃんは、満面の笑みを浮かべて、とんでもないことを言ってきた。
「せっかくこうして会えたんだ。俺のアパート来ないか?」
「え……」
胸が鳴った。
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