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「え、どうしたの? いきなり改まっちゃって」
「これでも一応センセイだからな。自分の生徒のこと、把握しとかねーとな」
「キョーイク実習生のくせに」
「それでもさ」
からかう俺に修兄ちゃんは真摯な瞳を向けた。
金縛りにかかったみたいに体が固まる。思わず目を逸らして、俺は薄笑いを浮かべて答えた。
「えー……。楽しいよ。勉強とかテストとかは嫌だけど。それなりに、ね」
「それなりね。なんだ、俺の頃と大して変わらねーんだな。……しっかし、お前、その髪」
「え? なに?」
「長い。茶色い。教育指導の先生、何も言わねーの?」
烏龍茶を一口飲んで修兄ちゃんは微笑んだ。
「たまに言われるけど、シカト。皆もこんな感じだし。それよか、修兄ちゃんの髪の方がおかしいって。黒すぎ。初め見た時、吹くかと思った」
「仕方ないだろ。初日から怒られたくねーもん」
照れ笑いを浮かべて修兄ちゃんは言った。少し頬が赤い。
「でもさ、修兄ちゃんカッコいいよね。ウチの女子がキャーキャー言って大変」
「あぁ、なんか来てたなぁ。昼休み。勉強見て欲しいって言ってたくせに、どこに住んでるのとか彼女はいるのとか。そればっかり」
呆れ顔で言って、修兄ちゃんは小さく溜め息をついた。
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