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「手ェ出さないでね。教育実習生の不祥事なんて、ウチの学校のメーヨに傷がつくから」
わざと冗談めかしてそう言うと、修兄ちゃんは優しく微笑んだ。
「それは無いよ。それに、ウチの学校に傷つく程の名誉ある訳ねーしな。……あの子達にも彼女いるって言っといたし」
「え……っ」
「え?」
思わず絶句してしまった俺を修兄ちゃんはきょとんとした顔で見上げた。
一瞬、静まり返る。微妙な空気。
俺は焦ってしどろもどろに言い訳した。
「あ……、えと。彼女いるんだって思って。ちょっと、ビックリして」
顔が熱い。背中にじんわりと嫌な汗が滲んでいるのがわかる。
心臓なんてバクバクで。
それが、修兄ちゃんに「そういう」相手がいるのがショックだからなのか、本当の自分を悟られそうなのが怖いからなのか、自分でもわからなくて。
ただ、俺は訝しげに見つめてくる修兄ちゃんを見ながら、意味不明な言い訳を繰り返していた。
「どうした? お前、何か変だぞ」
「あ……いや……」
涙目になりながら言葉に詰まる俺を見て、修兄ちゃんは吹き出した。
「嘘だよ」
「え?」
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