恋と初恋 ムスクと煙草

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「彼女いるの、嘘なんだ。……あ、そうだ。あの子達には内緒にしておいてくれよな。アピールしてくんのウザいから、そう言っといたんだ」  悪戯っぽくニヤリと笑って修兄ちゃんは言った。  俺はというと、呆気にとられて、ポカンとアホみたいに口を開けて修兄ちゃんを見つめるばかり。  少しして、ようやく声が出た。 「……あ。そ、そうなんだ」 「そうなんですよ」 「カッコいいのに。モテるでしょ」 「まぁね」  修兄ちゃんは余裕の表情でそう答えた。正直言って、ちょっとムカつく。 「そういうお前はどうなんだ?」 「え?」 「かーのーじょ。いるのか?」  不意に尋ねられ、胸のあたりがグッとなる。あまり訊かれたくない話題だ。 「……ううん。いないよ」 「でも、好きな子くらいはいるんだろ?」  胸が苦しくなる。こういう話題で思い浮かぶ顔がアイツだなんて。  普通の奴らみたいに盛り上がれない。「相手は誰?」そう訊かれるのが怖い。言えないし、言いたくない。  だから、いつもはぐらかしてた。  でも、今日の俺は何かおかしくて。妙に気分が高揚してて。  そのせいか、つい口が滑ってしまった。 「うん。……いるよ。でも、無理なんだ」  俯いてポツリと呟くと、修兄ちゃんはその言葉尻をとらえて、落ち着いた声で尋ねてきた。  
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