215人が本棚に入れています
本棚に追加
「彼女いるの、嘘なんだ。……あ、そうだ。あの子達には内緒にしておいてくれよな。アピールしてくんのウザいから、そう言っといたんだ」
悪戯っぽくニヤリと笑って修兄ちゃんは言った。
俺はというと、呆気にとられて、ポカンとアホみたいに口を開けて修兄ちゃんを見つめるばかり。
少しして、ようやく声が出た。
「……あ。そ、そうなんだ」
「そうなんですよ」
「カッコいいのに。モテるでしょ」
「まぁね」
修兄ちゃんは余裕の表情でそう答えた。正直言って、ちょっとムカつく。
「そういうお前はどうなんだ?」
「え?」
「かーのーじょ。いるのか?」
不意に尋ねられ、胸のあたりがグッとなる。あまり訊かれたくない話題だ。
「……ううん。いないよ」
「でも、好きな子くらいはいるんだろ?」
胸が苦しくなる。こういう話題で思い浮かぶ顔がアイツだなんて。
普通の奴らみたいに盛り上がれない。「相手は誰?」そう訊かれるのが怖い。言えないし、言いたくない。
だから、いつもはぐらかしてた。
でも、今日の俺は何かおかしくて。妙に気分が高揚してて。
そのせいか、つい口が滑ってしまった。
「うん。……いるよ。でも、無理なんだ」
俯いてポツリと呟くと、修兄ちゃんはその言葉尻をとらえて、落ち着いた声で尋ねてきた。
最初のコメントを投稿しよう!