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「好きな奴が友達……しかも、親友じゃさ」
「あぁ……。うん」
少し間を置いて、俺は思いきって切り出した。
「修兄ちゃんはさ」
「ん?」
「……修兄ちゃんも、あった?俺くらいの時……友達、好きになったりとか」
おずおずと遠慮がちに尋ねると、修兄ちゃんは一瞬瞳を巡らせた後、
「うーん……」
と、考え込むように天井を仰ぎ見た。
「あ、別に言いたくないんならいいんだよ? ただ、ちょっと気になったってだけの話」
「あったよ」
「え?」
「まぁ、俺の場合、友達じゃ無かったけどね」
そう言って、修兄ちゃんは俺の烏龍茶を飲んだ。
「先生だった。新任の熱血教師。……実は引っ越してから、俺の家メチャメチャでね。殆ど家に帰らない生活が続いてたんだよ、俺」
「えっ……」
思いも寄らない言葉に、絶句してしまった。意外だった。穏やかな修兄ちゃんしか知らない俺には、荒れた修兄ちゃんなんて想像もつかない。
「非行少年だった訳ですよ。これでも」
修兄ちゃんは自嘲気味に微笑むと、再びにコップに口をつけた。
「それを……まぁ、ベタだけど、立ち直らせようと頑張ってくれたのが」
「その、先生だったんだ」
妙に慎重な声で修兄ちゃんの言葉を繋げる。すると、修兄ちゃんは無言で頷いた。
「新任で、初めて受け持ったクラスだからかな。すっげー、一生懸命でさ。……俺もお前と同じだな。いつの間にか、好きになってた」
視線を合わせずに話し続ける修兄ちゃんを、俺は少し胸が痛むのを感じながら見つめていた。
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