キミ想イ

2/22
前へ
/64ページ
次へ
 修兄ちゃんがウチの学校に来て、一週間が経った。  その間、修兄ちゃんは授業をそつなくこなし、ウチのクラスの連中とも男女共に打ち解けていて。そういうトコ、流石というか何というか……。  昔からデキる人なんだよね。修兄ちゃんって。  昼休みの教室は、暖かな陽が差して、のどかな雰囲気に満ちていた。  瀬田と差し向かいで昼メシを食う。どうでもいいことをダベりながら。一日のうちで、一番楽しくて、少しだけ苦い時間。 「斯波。メシ食ったら、バスケ行かない? 工藤がさ、人数足りねーって騒いでて」  菓子パン片手に瀬田が言った。  いつもだったら、喜んで行く所……なんだけど。 「あー……。ごめん。俺、ちょっと用あるから」  そう言って断ると、瀬田の表情が俄かに曇った。 「なんだよ。斯波、最近付き合い悪い」 「……ごめん」 「別にいいけどさ。……訊いていい?」 「何?」 「用って、どんな?」  瀬田の質問に、俺は沈黙で返した。  すると、瀬田は諦めたように溜め息をつくと、 「言えないこと」  と、言った。  なんでだろう。責められてる気がする。  そう思うのは、後ろめたい気持ちがあるからだろうか。  ……誰に? 瀬田に? それとも、俺自身に? 「ごめん」  俺は口に残っていたパンの欠片をようやく飲み下し、絞り出すように謝った。 「いーよ、別に。謝んなくても。大事な用なんだろ。俺にも言えないよーな」  トゲのある、瀬田の言葉が胸に刺さる。俺は返す言葉が見つからず、ただ俯いていた。  それから少しして、瀬田が遠慮がちに尋ねてきた。 「……斯波さ。お前、何かあった?」  息が止まりそうになる。でも、すぐに取り繕って笑った。 「んー? 急に何? 別に無いよ、何も」  そう言うと、瀬田はじっと俺を見つめた後、静かに目を逸らして、 「なら、いいけど」  と、言ったきり黙り込んでしまった。  
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加