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「いっそのこと……したらどうだ?」
唇を少し離して修兄ちゃんは囁いた。声が熱っぽい。
「え?」
「告白」
「……嫌だ。できないよ」
目を逸らして俯く俺の肩を強く掴んで、修兄ちゃんは顔を近付けて言った。
「さっきはできた」
「あれは、だって……。……嫌だよ。修兄ちゃんだって、わかるだろ? アイツは俺のこと知らない。言える訳無いよ」
「言ったら、言い触らされる?お前の好きな奴って、その程度?」
「……違う。……ううん……本当は、わからない」
ギュッと修兄ちゃんのシャツを掴む。
信じたいと思う。アイツを。
でも、もしそれが俺の思い違いだったら?
そうであって欲しいっていう、俺の勝手な願望だったら?
思い込みだったら?
「親友なんだろ? 大丈夫……」
「そんな保証、どこにも無いじゃないかッ!!」
今まで出したこと無いくらいの大声で、俺は叫んだ。
「エーシ……」
「そんな保証……どこにも……。俺だって、アイツがそんなことする奴じゃ無いって思うよ。でも……わからないじゃないか。言い触らされなくても、避けられたら。変に距離を置かれたりしたら。……多分、俺……死んじまう」
じんわりと瞼が熱くなって涙が滲んできた。
修兄ちゃんは何も言わずに両手で俺の頬を包んで顔を上げさせた。真っ直ぐな修兄ちゃんの瞳と出会う。
「……そうだな。悪い。軽率だった」
そう言って、コツンと自分の額を俺の額に当てた。
そして、そのまま俺の頭を引き寄せて抱き締める。ぬくもりに包まれて、涙がこぼれた。
いっそのこと。
『好きな人』が修兄ちゃんのままなら良かったのに。
そんなことを思った。
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