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告白。
修兄ちゃんに言われて、ずっと頭の中でこの言葉が渦巻いてる。
想ってるだけで良かった。それだけで幸せだった。
何も無いフリして卒業して。いつかはこの気持ちも忘れる。
そう思ってた。
告白しようなんて、そんなの考えたことも無かった。
……でも、やっぱり。
言える訳無いじゃないか。
ふぅ、と溜め息をついていると、渡り廊下でダベっているクラスメイトと目が合った。
「斯波ぁ。浮かない顔してどうした? 腹でも痛ぇの?」
間延びした、呑気でアホっぽい声。
「べっつにぃ? 午後の授業、ダリィなって」
俺もいつもの調子で笑ってみせる。本心を見せないのは簡単だ。慣れてる。
「わかるわかる。ダリィダリィ」
「……でさ、お前もそう思うだろ?」
三人の話の輪の中に俺も加わり、続きが始まった。
「何? 何の話?」
尋ねると、三人は互いに目を合わせて含み笑いをした。
「なによー。なんなの」
「いやいや……。あのさ、二組の津島って知ってる?」
「んー……? いや……」
「なんだ。じゃぁ、今度教えてやるよ。で、ソイツがさぁ、あんまカマっぽいからホモなんじゃねーかって噂なってんの」
胸を、えぐられた気がした。
一瞬真顔に戻ったけど、すぐに笑顔の仮面をつけ直す。
「へ……へぇー。そうなんだ。どんな奴だろ。そんなカマっぽい奴見たことねーよ、俺」
「地味な奴だからなぁ。でも、ヒョロくて白くて。仕草もさ、妙に綺麗っていうか。オネェっぽいんだよな」
「お前、よく見てんなぁ。……あ。案外、お前ってー」
「なっ……!! 違ェよ、バカ!」
「慌てるトコが怪しいよな」
三人のやり取りを聞きながら笑う。
「俺は関係ありません」って顔で。「普通です」って顔で。
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