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瀬田と微妙な距離ですれ違う。そんな日が続いた。
いつもの、当たり前の会話がよそよそしいものに変わる。
互いに、互いの距離を測っているような。
そんな感じ。
この前までは、こんなじゃ無かった。
ダベって笑って。バカやって。「あの女がカワイー」「ありえねー」とか、自分騙して普通のフリ。
それを、どうして今はできないんだろう。他の奴に対しては簡単にできるのに。どうして瀬田にはできないんだろう。
ぎこちなくなる。態度も言葉も、全部。そのせいで、全てを見破られる気がして。
俺は瀬田の傍にいられなくなった。
「斯波、今日一緒に帰んぞ」
帰りのホームルームが終わった直後、有無を言わせないといった口振りで、瀬田は言った。
教室の騒がしさが遠くに聞こえる。逆に、自分の心臓の音がやたらと大きい。
目の前にいる瀬田にも聞こえてしまいそうな気がして、俺は目を逸らした。
「あ、でも……」
言い淀む俺の腕を、瀬田はグッと掴んだ。そして、見上げる俺をねめつけて乱暴に言った。
「用なんか、ぶっちぎれ。話があるんだよ」
既に喧嘩腰だ。
俺はそのあまりの迫力に負けて、気がつくと頷いていた。
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