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その目に吸い込まれそうになり、俺は喉の奥まで出かけた言葉をグッと飲み込んだ。
ダメだ。無理だ。
言える訳無い。
「……なーんて、ね。驚いた?」
声の震えを隠すために笑ってみせる。
瀬田の目なんか見れない。俯いて、でも口元だけには笑みを浮かべて。引きつった頬が別の生き物みたいにピクついてる。
仮面を上手くつけられない。
「あ、あんま、瀬田がマジなるからさー。からかってみた。悪ィ悪ィ」
勝手に言葉が出てくる。心をごまかす最低な言葉だ。
やっぱりムリだよ。修兄ちゃん。
俺には、できない。
「でも、本当に何も無いんだ。お前、思い込み激しすぎ」
あぁ。今の、絶対瀬田を怒らせた。
殴られるかもしれない。
「俺なら、大丈夫だ、か……」
殴られるのを覚悟で顔を上げると、そこにいたのは困惑した表情の瀬田だった。
瞬間、俺は両手で口を押さえて俯いた。
バレた。
泣きそうになっているのを。
必死に隠そうとしてて、喋り過ぎたのかもしれない。
「斯波、お前……」
「や……やっぱ、俺、行くわ!! じゃーな!!」
殆ど涙声でそう言うと、俺は瀬田を残して駆け出した。
全力で走る。
同時に涙が溢れ出た。
最悪だ。
絶対おかしいって思われた。
修兄ちゃん。
修兄ちゃん。
修兄ちゃん。
俺、告白にすら届かないよ。
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