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屋上の鍵は開いていた。
修兄ちゃんだ。
勢い良く扉を開けて屋上に出る。
「修兄ちゃん!!」
涙を拭うことなく大声で叫んだ。
「修兄ちゃん!! 修兄ちゃん!!」
コンクリートが夕焼けの朱に染まって眩しい。
俺は目を細めて修兄ちゃんを探すけど、どこにもいない。
涙を拭って、迷子の子供のようにまた叫ぶ。
「修兄ちゃん!! 修兄……」
「うるせーな。騒ぐなよ」
不機嫌な声が聞こえて振り返る。
修兄ちゃんは階段室の陰で、壁にもたれて気怠そうに座っていた。
「ここは、俺の秘密の隠れ家なんだぞ。あんま騒ぐとバレるだろーが……って」
煙草を片手にチラリと俺を見上げると、修兄ちゃんは呆れたように溜め息をついた。
「……お前、また泣いてんの?……ったく、男の子だろぉ? ちったぁ、我慢しなさいよ」
「修兄ちゃん!!」
「あぁ?」
「俺と付き合ってよ!!」
涙と鼻水でグシャグシャの顔のまま、叫ぶようにそう言った。
夕日のせいで俺の顔も修兄ちゃんの顔も赤くなっている。
朱色のコンクリートに濃く黒い影が伸びる。
修兄ちゃんは向き直り、小さく息を吐くと、遠い目で煙草を吸った。
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