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これが恋なのか、どうなのか。
実際、俺にはわからなくて。……いや、普通に考えればおかしいことなんだ。
アイツは、俺の親友。アイツも多分そう思ってくれているはず。
それなのに、俺はというと。
「斯波。おい、しーばー!!」
「うわっ」
耳元で大声を出され、ビクリと肩が揺れた。とっさに声の方を向くと、瀬田が不満そうな顔でこちらを見ていた。
瀬田芳春(よしはる)。俺の親友。……親友だった奴。俺の中では、もう過去形だ。
今では……。
「ずーっと呼んでんのに。お前、無視すんだもん。やんなるよなー」
俺の、好きかもしれない、奴。
「悪い悪い。ちょっと考え事」
「ふぅん?」
悪戯っぽく答えて、瀬田は隣りの窓辺に寄りかかった。
朝は、いつも教室の前の廊下でダベる。いつの間にか、そうなった。俺達の習慣。
少し開いた窓から涼しい風が吹き込んで、瀬田の黒髪を撫でた。
「あー。毎日毎日、面倒だよなぁ」
不意に鳴る心臓の高鳴りをかき消すように、俺はわざとダルそうな声を出した。
「確かに。勉強、テスト、勉強、テストの繰り返しだもんな」
明るく笑って瀬田が返す。
「瀬田はいいよ。頭良いもん。俺なんかさー」
「別にそんなことないよ。俺、ボンミスよくするし」
「それでも、俺よか点数良いじゃん」
「斯波さ、テスト勉強してないだろ。いっつも」
「うん」
「だからだよ。バカ」
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