215人が本棚に入れています
本棚に追加
校門に寄りかかって、もう随分経つ。沈む夕陽が燃えるように赤くて眩しい。
後ろに伸びた影が真っ黒で、不意に自分は何をしているんだろうと思う。
ふと、昔を思い出す。
俺の家には古い蔵があって、二階の屋根裏には小さな部屋がある。
屋根裏部屋の秘密基地。そこを俺達は遊び場にしていた。
たしか、こんな夕暮れ時だった。
修兄ちゃんの顔が、夕陽に照らされて真っ赤に染まっていたのを覚えている。
きっと、俺の顔も同じだったと思う。いや、俺の方がずっと赤かったかもしれない。
震える指で唇に触れる。
あの日、俺は……。
「……こんな所でどうした。もう生徒は殆ど残ってないぞ」
ハッとして振り返ると、訝しげに自分を見つめる修兄ちゃんがいた。
一瞬、息が詰まりそうになる。
「……修、兄ちゃん」
たじろいで呟くと、修兄ちゃんは小さく息をついて弱く微笑んだ。
変わらない、眩しそうに目を細める、照れたような笑い方。
「久し振りだな。……エーシ」
エーシ。俺の名前。衛士。本当は『えいじ』と読むのに、修兄ちゃんはわざとエーシと呼んだ。こんな変な呼び方をするのは、修兄ちゃんだけだ。
懐かしい呼び声。涙が出そうになる。
「何、泣いてんだよ。カンドーの再会って程、離れていた訳じゃないだろ?」
思わず滲んだ涙を指で拭っている俺の頭を、修兄ちゃんは笑ってガシガシと乱暴に撫でた。
最初のコメントを投稿しよう!