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中学を卒業して高校へ入ってすぐだった。
もう3年、ここにいるのか――――
カチャ……
静かにドアが開かれる。
そこから覗かせたのは見慣れた母の顔。
「今日は顔色良さそうね」
私はにっこり笑って、母に心配させまいと気遣った。実際、気分もそれほど悪くない。
私の笑顔に、笑顔を返した母はドアを閉めてベッドの横まで来た。
「ねぇ、美華(ミカ)」
「なぁに?」
「じゃーん!」
と言って、母は手に持っていた紙袋を突き出した。
「美華に似合うと思って」
母は、できもしないのに、片目を瞑って私にウインクをしてきた。
不器用な母のウインクに思わず笑ってしまったが、ありがとう、とお礼を言った。
紙袋に入っていたのは、真っ白なワンピースとそれに合わせたような白いヒール靴。
ワンピースには、胸元と裾にレースがあしらわれていて、シンプルだけどかわいらしいものだった。
買い物には滅多に行けないから、こういうかわいい服は見るだけでテンションが上がってしまう。
あまり血圧上がっちゃうとまずいんだけどね!
でも病は気からって言うし、ある程度の楽しみは必要だと思う。
しばらくそのワンピースに見惚れていると、
「気に入った?」
母は満足そうな笑顔を見せていた。
「うん!ありがとう、お母さん!」
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