第一話

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「そんなもの、なんで拾ってきたんだ?」 顔を上げると、そこには颯牙(ソウガ)の呆れ顔があった。 「…………なんとなく」 それしか答えは思い浮かばない。 「なんとなくかよ……」 今度はがっくりと肩を落としていた。 そして、 「まぁそんなコトだろーとは思ったよ」 と付け加えた。 思ってたなら肩を落とさなくてもいいのに、とは口には出さないでおいた。 むしろ、ガーデニングが趣味であったとしても、颯牙が手に持ってるジョウロの方が似合っていないと思った。 「てめ…なんか今いろいろと思ってくれたなぁ」 颯牙の表情はくるくると変わっていて、いつも見飽きない。 俺は颯牙が言う『そんなもの』を 大事に抱えて、だだっ広い庭を出た。
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