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『この犬の体…傷跡がある…きっと飼い主から暴力を受けていたのよ!』
女がそう言うと、人間達は
『だから殺すなと言うんですか!?この犬は人を殺したんだぞ!!』
と、殺せと騒ぎ続けていた。
女はフルフルと首を横に振ると、
『お願い待って…助けてあげて…』
と言い、犬に目を向けた。
人間達はまだザワザワしていたが、その声は徐々に小さくなっていった。
犬は女がこちらを向き、目が合った瞬間、
ガルルルルルルルルッ
と、またさらに大きく唸り声を上げた。
(一体何なんだこの女は…俺の命乞いなどして…何が目的だ!?)
女はゆっくりと犬に近付いていき、手をそっと伸ばした。
(俺に触るな!!汚らわしい人間め!!)
犬はその手を払いのけると、いつでも襲い掛かれる体制に入った。
人間達は口々に、
『噛み殺されるぞ…』
と、ヒソヒソと言い合っていた。
けれど女は穏やかな笑みを浮かべると、
『大丈夫だから、私を信じて…』
と優しく犬に語り掛けた。
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