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グルルルルルッ
ウゥゥゥゥッ
(信じられるか!人間など!!)
犬は一層激しく唸りと威嚇の声をあげた。
すると女は、人間達に振り返り、
『あなた達は家に帰って。この犬の事は私に任せて下さい。』
と言った。
『高杉の嬢様…危険です!人喰い犬なんですよ!?』
人間達は皆残ると言い張っていた。
けれど女は軽く笑みを浮かべ、
『大丈夫、安心して下さい。』
と答えた。
その言葉を聞いた人間達はしばらく女を見ていたが、やがてゆっくりとその場を立ち去って行った。
女は再び犬の方面に向き直るとニコッと笑い、
『もぅ大丈夫よ!良かったね!!』
と言った。
(……)
犬は真っ直ぐに女を見つめた。
いつの間にか唸り声をあげる事も、攻撃体制をとる事も忘れていた。
『もぅ二度と人を咬んだりしちゃ駄目よ、ワンちゃん。』
女はそう言うと、背を向けて歩き出した。
その時、
『さっきからどいつもこいつも…俺は犬じゃない…狼だ!!』
と突然背後から声がして、女は足を止め振り返った。
振り返るとそこには、ついさっきまでいたはずの犬の姿が消え、代わりに1人の男が立っていた。
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