3008人が本棚に入れています
本棚に追加
「…せめて旅館に着くくらいまでは、降らないと良いですねぇ…」
「本当にな。まぁ、大丈夫だろう」
静に倣って冷と愛季も空を見上げ、真っ白な溜め息を吐く。
雲は今にも泣き出しそうで、愛季はしゅんと眉を垂れた。
「愛季! 愛季! 寒い!!」
「そりゃそうですよ、陽さん雪でびしょ濡れじゃないですか! ちょ、こっち来ないで下さいよ!」
「ひっで!! 明は良いくせに!!」
「あははは、ざまぁ見ろ☆ さぁ愛季、ボクの胸に飛び込んでおいで!」
「そう言う明さんも充分濡れてるじゃないですかぁ!」
雪に足を取られる事なく雪の上を走る愛季と、転けつ転びつのふたり。
潜在的な運動神経が窺える光景である。
「なァに燥いでんだガキ共! 他の奴らはもう動いてんぞ、戯れてねぇでホテル行け」
そこで、八代登場。
愛季を抱き留めてそのまま抱き上げた八代は、養護教員とは思えない程派手な、黒い毛皮のコートを着ている。
「香尋、お前何してんだ」
「だって… ふたりが」
「よし、春日3と4は数学1な」
「何で養護教諭がボクらの数学の成績決めんのさ! 大体ボク数学いいんだけど!」
「1? 通知簿って3が最高だろ、別に良いんじゃねぇの?」
「「「…え?」」」
結論。
陽は、どうやら皆の予想以上に阿呆だったようだ。
最初のコメントを投稿しよう!