慰安布団

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「…せめて旅館に着くくらいまでは、降らないと良いですねぇ…」 「本当にな。まぁ、大丈夫だろう」 静に倣って冷と愛季も空を見上げ、真っ白な溜め息を吐く。 雲は今にも泣き出しそうで、愛季はしゅんと眉を垂れた。 「愛季! 愛季! 寒い!!」 「そりゃそうですよ、陽さん雪でびしょ濡れじゃないですか! ちょ、こっち来ないで下さいよ!」 「ひっで!! 明は良いくせに!!」 「あははは、ざまぁ見ろ☆ さぁ愛季、ボクの胸に飛び込んでおいで!」 「そう言う明さんも充分濡れてるじゃないですかぁ!」 雪に足を取られる事なく雪の上を走る愛季と、転けつ転びつのふたり。 潜在的な運動神経が窺える光景である。 「なァに燥いでんだガキ共! 他の奴らはもう動いてんぞ、戯れてねぇでホテル行け」 そこで、八代登場。 愛季を抱き留めてそのまま抱き上げた八代は、養護教員とは思えない程派手な、黒い毛皮のコートを着ている。 「香尋、お前何してんだ」 「だって… ふたりが」 「よし、春日3と4は数学1な」 「何で養護教諭がボクらの数学の成績決めんのさ! 大体ボク数学いいんだけど!」 「1? 通知簿って3が最高だろ、別に良いんじゃねぇの?」 「「「…え?」」」 結論。 陽は、どうやら皆の予想以上に阿呆だったようだ。
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