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「…へくちっ」
そして見た目にぴったりの、可愛らしい愛季のくしゃみ。
「おい… 寒いから充分着込んで来いっつったろ、馬鹿野郎」
「着込んでます~」
すんと鼻を啜り、軽く小突かれた愛季が八代に反論する。
「…ったく」
八代はぼりぼりと頭を掻き、面倒臭そうにそう言ったかと思えば。
「ひょああぁぁぁあ!?」
八代は豪快に愛季を垂直に放り上げ、素早く毛皮のコートを脱いだ。
どさり、と腕の中に戻ってきた愛季を、手際良くそのコートにくるむ。
そのまま姫抱きの形に腕を回した八代は、行くぞ、と一言、さっさと歩き出した。
「じ、ぶんで、歩けますよ!」
「ふざけんなよ? 今風邪ひかれたら、俺が北海道を堪能出来ねぇだろうが」
まさに理不尽。
若しくは傍若無人。
抵抗の気も失せた愛季は、確かに暖かい腕の中で、大人しく運ばれる事にしたのであった。
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