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「は… あ、はぁ… ぅ、」
「…香尋さん?」
小さく、唸るような愛季の声に、静は本を置いて愛季を見る。
苦しそうに身を捩り、胸を押さえるように両腕を組む愛季は、白い頬に濃く朱を落としていた。
「っ、香尋さん!?」
眉間に皺を寄せ、静が愛季に駆け寄る。
栞が挟まれていない本が床に落ち、ばさりと音を立てた。
普段ならば絶対に有り得ない、陽が見たら口元を押さえるどころか失神しそうだ。
静は手早く愛季の顔色や呼吸を確認し、ただの軽い熱中症だと判断した。
安心したように息をつく静。
「…まったく、こんなに厚着したまま寝るからですよ」
どうやら、着込んだ防寒着と、よく効いている暖房のせいらしい。
静は暖房を僅かに緩め、愛季の肩を軽く揺さぶった。
「ほら… 香尋さん、起きて下さい」
「ん… む?」
潤んだ瞳を、薄く開く愛季。
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