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「あったかぁい」
むぎゅう、と静の腰に手を回す愛季。
「香尋さん… こら、放しなさい」
「やーぁ」
「香尋さん」
「やーですーぅ」
愛季が精一杯の力を込めたとしても、愛季より静の方が体格も大きく、抜け出すのは難しくはない。
ただ、静がそれをしないのは。
「傍に居ないと、やーです…」
意識朦朧とする中、不安に押し潰されそうな愛季を見たからに他ならない。
「…香尋さん、大丈夫ですか?」
「…息が苦しいです」
「まだ収まっていないのでしょう。僕から離れて空気を吸うと良いですよ」
ふるふると、頭を振る愛季。
仕方なしに、静は愛季の両頬を包んで自らに向けた。
つまりは、上を向かせたのだ。
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