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僕が目を覚ました時もまだ、静さんは僕を抱き締めていてくれていた。
薄れゆく意識の中で確認した時刻からは、優に2時間は経っているというのに。
胸の奥にふんわりと、何かが広がる音がする。
…だめ。
暖かい、と思う前に離れた。
つられて眠ってしまったらしい静さんに毛布を掛けて、ついでに眼鏡も外してあげて、僕は静かに部屋を出る。
服は脱いだままだったから少し寒かったけど、上着を着る気にはなれなかった。
ひとり廊下を歩く僕を、物珍しそうに学園の生徒が見つめる。
そうか、そういえば僕がひとりで歩くのも久しぶりなのか。
前は僕がひとりだと、色んな物が投げつけられたりしたんだけど。
今はもうそんなことはない。
いつも、誰かが傍に居たから。
僕を護るなんて… 戯言を囁いて。
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