自分自身

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「僕に触らないで下さい」 上着を突き返した。 暖かな指を引き剥がした。 「僕を甘やかさないで下さい」 「愛「僕に話し掛けないで下さい」 不思議と悲しかった。 涙は出なかった。 やたらと苦しかった。 胸と息が詰まる気がした。 「貴方達と一緒に居たら、僕が狂っていく」 ぎゅっと、拳を握り締めて俯いて。 「僕が僕じゃなくなるんです」 そのまま、僕は背を向けた。 春の日差しみたいに暖かな橙色に。 陽さんに。 「…愛季にとっての愛季って、何?」 後ろから不意に投げかけられた問いに、僕は振り向く。
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