自分自身

10/14
前へ
/272ページ
次へ
こんなにも、僕は弱かっただろうか。 「不安なのか? 悲しいのか? それともどっか怪我したか? ごめん、オレなんかじゃ、お前が泣いてねぇって事ぐらいしかわかんねーもんよ」 この心地良い体温を突き放す事も出来ないなんて!! 「不安なら、大丈夫だ。オレや兄貴は皆、お前の味方だからな」 僕の抵抗を物ともせずに、陽さんは僕を強く抱き締める。 「悲しいなら、泣いちまえ。胸とか、見られたくねぇなら背中でも、オレで良ければ貸してやる」 未だに降り続ける雪を乗せ、陽さんの綺麗な橙色が疎らになる。 「どっか痛いならおぶってやる。八代か冷兄貴に看てもらおーぜ」 何だか堪らなくなって、そっと指先で雪を払い落とした。 「…ありがとな。取り敢えず触れてはくれんのか」 この人は、陽さんは、こんなにも格好良かっただろうか。 雪の光は、まるで美化するように僕らを包み込む。
/272ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3008人が本棚に入れています
本棚に追加