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こんなにも、僕は弱かっただろうか。
「不安なのか? 悲しいのか? それともどっか怪我したか? ごめん、オレなんかじゃ、お前が泣いてねぇって事ぐらいしかわかんねーもんよ」
この心地良い体温を突き放す事も出来ないなんて!!
「不安なら、大丈夫だ。オレや兄貴は皆、お前の味方だからな」
僕の抵抗を物ともせずに、陽さんは僕を強く抱き締める。
「悲しいなら、泣いちまえ。胸とか、見られたくねぇなら背中でも、オレで良ければ貸してやる」
未だに降り続ける雪を乗せ、陽さんの綺麗な橙色が疎らになる。
「どっか痛いならおぶってやる。八代か冷兄貴に看てもらおーぜ」
何だか堪らなくなって、そっと指先で雪を払い落とした。
「…ありがとな。取り敢えず触れてはくれんのか」
この人は、陽さんは、こんなにも格好良かっただろうか。
雪の光は、まるで美化するように僕らを包み込む。
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