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「…上手く言えるかわかんねーけど、愛季は愛季だからさ」
陽さんの肌に触れた雪が、溶けた水となって流れ落ちる。
目尻から流れ落ちるそれが、雪なのか涙なのか… 僕は知らない。
知りたくない。
「頼むから、突き放すみたいな事すんなって… 泣きそう」
寂しいのだろうか。
玩具を取り上げられた子供のような顔で、陽さんは僕に言う。
「オレは… オレ達は、ここ半年の愛季しか知らないけど」
「…やめて」
「愛季が、すげぇ優しくてすげぇ脆いって知ってる」
「やだ!!」
「初めて会った時だって、触れたばかりの木のためにお前は泣いてた」
「泣いてない!!!」
「泣いてただろ。涙が流れてたかは知んねーけど、心が」
必死に腕から抜け出して、耳を塞ぐ。
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