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「…ったく、何時間ほっつき歩いてた。完全に冷えちまいやがって、あーぁ面倒くせー奴」
これだからガキは、などとぼやきながら、八代はしかし表情を強ばらせた。
湯上がりとはいえ八代の指とて、さして暖かい訳ではない。
それでも自分の指が凍るような感覚に、八代は小さく舌打ちをした。
「春日達や他の奴らは、晩飯食ってんぞ」
愛季の口から、答えは出ない。
未だ聞こえるカチカチという音は、愛季が極限状態である事を告げる。
「馬鹿が…」
八代は愛季の細く小さな体を抱き上げ、浴場に向かって歩いた。
ばしゃーん。
突然服のまま湯船に放り込まれ、愛季が激しく咳き込む。
貸切の旅館で、皆は食事中。
他に人も居ない露天風呂で、八代はやりたい放題である。
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