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そのまま、愛季は俯いた。
ほんの少しだけ、シーツを握る手が震える。
「…実を言うとですね、僕が藍梨の事を思い出せなかったのは僕自身のせいでもあるんです」
自らの体を抱き締めるように
「僕自身が、藍梨の事を忘れたがっていた。そんな僕が、僕は憎たらしくてならない」
強く
「たった1人の兄弟で」
強く
「この世に残った」
自らを抱き締め
「たった1人の家族なのに…!!」
頭を垂れた。
「…寝ろ」
滝のように涙を流す愛季の頭を、枕に押し付ける八代。
「1日で、色んな事がありすぎたんだよ」
せめて、今だけは。
「寝ろ」
この『子供』を、眠らせてやりたい…
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