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「っと…聞いた話では、此処で男が働けるのはこの店だけらしいですよ」
「と なると、藍梨は此処にいる可能性が高いのか」
「そう思います。兄さんは理解が早くて助かりますね」
「…」
聞こえない振りをしながら、冷は煌びやかな店の扉をくぐった。
「いらっしゃいませ」
「僕らは客じゃありません。人捜しです」
言いながら、静は周りを見渡した。
全体的に淡い紫に染まった店内は、男物と女物の香水の香りが立ちこめ、とても気分が悪い。
吐き気を呼ぶその空気に眉をひそめ、静は問うた。
「この店で、藍梨という黒髪の少年は働いていますか」
「あぁ…お待ちかねですよ」
そう言って通されたのは、店の奥。
どうやら控え室らしい其処では、1人の店員が電話の受話器を持って立っていた。
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