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「…何もしてない」
ゆっくりと顔を上げた藍梨は、愛季とそっくりな瞳を涙で潤ましていた。
「でも、オレのせいだ」
ぼろぼろと涙を流す目元をよく見れば、赤く腫れて充血しているのが分かる。
「逢うべきじゃなかった。逢っちゃいけなかったんだよ…!!」
思わず手を離した明の腕からずり落ち、藍梨は膝から崩れ落ちた。
「…頼むからさ」
掠れ。
「アンタら、愛季の大事な人なんだろ」
悲しみと後悔を滲ませ。
「愛季の」
苦しみに押し潰されそうな。
・
「オレの弟の傍にいてやってくれよ…!!!」
・
…兄の声で、藍梨は言った。
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