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「…頼んだからな」
涙を乱暴に拭い、藍梨は部屋のドアに手を掛けた。
「どこに行く?」
「店に戻るんだよ。愛季にはアンタらが付いててくれるんだし」
「なっ…弟がこんな状態なのに、テメェ金稼ぐってのかよ!?」
思わず声を荒げ、今度は陽が藍梨に詰め寄った。
「…仕方ないじゃん」
「仕方ないって「そうしないと」
陽の言葉を遮った藍梨は、驚く程虚ろな瞳をしていた。
「人質が…愛季が危ないんだから」
…点滴が、ぴちょんと小さな音を立てた。
あぁ 哀れかな 美少年
新たな事実は 聞くに叶わず
美しき兄の瞳は虚ろ
愛しき悪魔の瞳は虚ろ
美少年 美少年
永久に眠るが 幸せか
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