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「人質…? 人質ってどういう「静かに。愛季は絶対安静なんだから」
胸倉を掴まれたまま、藍梨はふっと下を向いた。
服が首に食い込むのを見て、陽が渋々ながら手を放す。
2、3度咳き込んだ後、藍梨はきっ、と5人を見据えた。
「オレ達の叔父の名を知ってるか?」
「時雨… 香尋、時雨」
静寂をそのまま表したような病室に、明の声が嫌に響く。
「時雨じゃない。もう1人」
ぎゅっ、と拳を握り締め、藍梨は憎々しげにその名を紡いだ。
「司<ツカサ>。香尋、司」
愛季にそっくりな丸い瞳に、怒りの炎がたぎる。
「あの、金に取り憑かれた悪魔の名だよ」
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