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「待って」
静まり返る病室に、澄んだ弱々しい声が響き渡る。
「待って、藍梨」
ぴちょり、点滴の音をバックに、顔面蒼白の愛季が起き上がった。
ぶちぶちと痛々しい音が響き渡り、少量の鮮血と共にコードやその他諸々が愛季の体から離れる。
「愛、季」
驚いて目を見開き、藍梨は震える唇でその名を紡ぐ。
「藍梨「いい!!」
何かを伝えようと口を開いた愛季を、藍梨は素早く遮った。
「罵りも罵倒も蔑みもいらない。これ以上、恨まれたくも恐がられたくもない」
「藍梨「頼むから!!」
ぎゅっと拳を握り締めて、藍梨は叫ぶ。
「…これ以上、嫌わないでくれ…!」
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