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「藍梨…」
ぺたり。
裸足の足が、冷えた床に触れた音がした。
「っ…」
ふらり、小さく細い体が傾いた。
「香尋!」
慌てて傍に居た八代が手を伸ばす前に。
どさっ
「…やっと、触ってくれた」
…愛季の体を受け止めたのは、驚くべき素早さで愛季の元へ来た藍梨だった。
「ねぇ、藍梨。聞いてくれる?」
にっこりと微笑んで、愛季は細く呟くように続けた。
「僕が言いたいのは、罵倒でも蔑みでも、増してや恐怖の罵りでもないよ」
真っ白な指が、そっと藍梨の頬をなぞる。
「僕が言いたいのは」
ぽつり。
愛季の流した涙が、床を少し濡らした。
「ごめんね」
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