契約破戒

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ふらり。 そんな音が立つかというほど弱々しく、愛季が1歩前に出た。 「香尋司。あなたに、この人達と藍梨の解放を希望します」 凛として気高い愛季の声が、静かな室内に波紋を広げた。 男達は家族と自分を天秤にかけているのであろう、苦虫を噛み潰したような顔で黙っている。 「それは出来ないな」 「勿論、対価は払います。だから、先に契約書をこちらに渡して下さい」 さっ、と細く白い右手を開いて前に出し、愛季は強く司を見据えた。 迷いの色など一切感じられない美しい瞳。 誰もを魅力する立ち振る舞い。 そのどちらもを、愛季は持ち合わせていた。
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